「確かに、その気持ちは良く分かるぜ

「確かに、その気持ちは良く分かるぜ。糞野郎だからな、あの中隊長は。」「そうそう、そういうワケで、大隊長に願い出て、こっちの配置に変えて貰った。ハンベエ達と一緒に闘うつもりだから、よろしくな。」ドルバスは闊達に言った。ハンベエはドルバスの言葉に、ちょっと小首を傾げ、疑問を口にした。「配置換えなんて、そんな簡単にできるのか?」「ああ、俺は特別なのさ。中隊長付き武官というのは元々員数外でな。戦場での配置計算には入ってないんだ。まっ、普通は中隊長と朱古力瘤徵狀共にするんだがな。」「ドルバスが側にいてくれるんなら、こんな心強い事はないが、立場が悪くなるんじゃないのか?」「いやいや、ハリスンとの関係なら、元々良くなかったし、ハンベエが来てからは、腹に据えかねる事が増えた。おまけにこの間の給与支給事件で決裂状態だ。今更悪くなりようもない。」「俺のせいで、ドルバスの立場が悪くなったのか。」「違う、違う。ハンベエが現れたのはキッカケに過ぎん。何せ糞野郎だからな、あいつは。戦場でまでお付き合いはごめんだぞい。」「ふむ、じゃあ、気にしない事としておこう。」ハンベエはニヤリと屈託なく笑った。「そうそう、そんな事を気にするのはハンベエに似合おうとらん。俺としても、死ぬなら、糞野郎の側よりはましな場所を選びたいからのう。」「死ぬ?」「死ぬと決まったワケではないがのう。敵はとんでもない数らしいぞ。連隊長の陣屋がざわざわしておったわ。」「おやおや、敵の勢力まだ分かって無かったのか?」「さあ、俺もはっきりした事は知らないけど、最初守備軍本部から知らされた情報では大した数では無かったらしい、それが、第5連隊の斥候が戻って来て報告した敵勢力はとんでもないものらしいんじゃ。」「・・・。幾らぐらいなのかな?」「騎兵2万とも3万とも言われてるらしい。」「騎兵3万!・・・」「とにかく、連隊長の陣屋から、タゴロローム要塞に早馬が出されたみたいじゃ。」(騎兵3万・・・死ぬかも知れん。)ハンベエは表情は眠たげないつものポーカーフェイスを装いながら、内心では、冷や汗をかいた。軍隊に所属して合戦に参加するのは、初めてであったが、ハンベエは戦争について無知であったわけではない。 フデンの下で修行していた時に馬術の手解きも受けていたし、騎馬戦の知識も教えられていた。3万の騎兵が襲い掛かって来たら、3千人ちょっとの第5連隊など、淀みに浮かぶ泡沫より儚く消滅してしまうだろう。さて、どうしたものか。ハンベエは動揺を悟られぬよう、周りの兵士を窺い、馬防柵を見た。連隊の斥候の情報では騎兵2、3万であったが、実際のアルハインド族の勢力は騎兵5万であった。第5連隊隊長は斥候からの「敵は騎兵2、3万」という報告にぶったまげて、連隊のタゴロローム要塞への撤退許可をバンケルク将軍に要請した。しかし、バンケルク将軍からの返事は「撤退命令有るまで、陣地防衛に努めよ。」であった。第5連隊長及びその側近は、敵についての情報を第5連隊兵士達に伏せる事としたが、最初の斥候報告の際に注意を怠ったため、連隊の斥候が把握した敵勢力が、「騎兵2、3万」であり、かつ、タゴロローム守備軍に指示を仰ぐための伝令を送った事はすでに漏れてしまっていた。その情報は第5連隊兵士の隅々まで、あっという間に伝わった。当然ながら、兵士達には動揺が広がり、兵士の逃亡が危惧されたが、兵士の逃亡は辛うじて抑えられていた。


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