「一つ目は

「一つ目は、イザベラの正体はドルフと呼ばれる殺し屋であるらしいという事。このドルフというのは、そっちの世界ではかなりの有名人らしいのですな。年齢性別その他一切不明の一匹狼ですが、ここ5年の間に60件に余る暗殺をしてのけていると言われております。」「年齢性別その他不明なのに何故イザベラと同一人物と判るのだ・・・」「催眠術と黒い鉄芯ですな。ドルフの暗殺に良く使われるのが、この二つでして。今回、イザベラがドルフと同一人物だと判明した事により、Yaz避孕藥若い女であった事が明らかになったわけですな。」「ふん、イザベラが若い女である事は事件発生当初から知れておる。ドルフという殺し屋と同一人物だとしたところで正体不明な事に変わりはないではないか。」「確かにそうではありますな。しかし、イザベラが殺し屋ドルフと同一人物であるとすれば、我がゴロデリア王国の軍あるいは諜報関係者ではないという一点は明らかになりましたな。」「大した収穫だのう。仮にイザベラが我が王国と無関係だとして、イザベラを動かして王女の暗殺を企てた者も我が国と無関係という事になるのかの。」ラシャレーは口元を歪めて皮肉った。「そうはなりませんな。」「二つ目は何じゃ?」「二つ目は、南方戦線でフィルハンドラ王子の補佐をしているはずのステルポイジャン将軍の右腕ガストランタが、昨日、このゲッソリナにやって来たという事ですな。」「ガストランタが・・・まことか?」「間違いありませんな。奴め、モスカ夫人のベルゼリット城にもぐり込んだようですな。」「ガストランタというのは、確か伝説の勇将と言われたフデン将軍の一番弟子を名乗っていた男だったな。」「そうですな。5年ほど前に、フデン将軍から武術兵法を授けられ、武勇無双の評価の証としてフデン将軍の愛刀『ヘイアンジョウ・マサトラ』を譲られたと称してステルポイジャンに取り入り、その右腕として幅を効かせている男ですな。」「まことフデン将軍が武勇無双と評したなら、敵に回したら手強い男だが、実績の方はどうであったかの。」「いやいや、これが中々の強者でして、戦場でも数々の手柄を立てておりますな。・・・ただ、・・・」「ただ、何じゃ?」「我々の存じるフデン将軍は戦場においては一種人間離れした人物でありまして・・・」「確かに、あのフデンという将軍とは、時には味方として、時には敵としてその戦ぶりを見たが、その方の言うとおり、戦の神の生まれ変わりかと思うほどの化け物であったからのう。」「そのフデン将軍から武勇無双の評価を受けたほどとは思えませんが・・・まあ、腕は立つようですが、フデン将軍には及ばないでしょう。しかし、奴の差している刀は紛れも無く『ヘイアンジョウ・マサトラ』。フデン将軍の一番弟子という触れ込みに間違いは無いようですな。」「そうか。・・・話は違うが、わしは、ほれ、あのハンベエがフデンの弟子だというのなら、なるほどと思ったりするがの。」「確かに、ハンベエという男も人間離れしたところがありますな。」「ところで、昨日の夜ベルゼリット城をステルポイジャン将軍も訪れた形跡がありますな。」「フム、きな臭いのう。」「まことに。・・・」「さて、三つ目は何じゃ?」「そのベルゼリット城からさほど遠くないゲッソリナ郊外で、兵士崩れらしい者どもの死骸が15体発見されました。どうも、ベルガン縁の者共のようで。全員、一太刀で斬り捨てられていました。」「また、ハンベエか?」「確かに、それだけの腕達者は現在、ゲッソリナにはそう何人もはいませんが、あるいは、ガストランタの仕業という事も。」「フム、フデン将軍の一番弟子なら、あり得るな。」ラシャレーは取り立てて興味も無い様子で呟いた。ボーンがいれば、色々と聞けたものを・・・とハンベエは多少不便を感じていた。昨日出くわした、『ヘイアンジョウ・カゲトラ』に良く似た刀を差した男の事を調べたいと思ったのだが、どこから調べて行けばいいのか思いつかない。 


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