だからなんだろうか

だからなんだろうか。こんなに血の匂いから離れられないのは…―。近藤は心配そうに土方の肩を叩くと、部屋を後にした。対する土方は暑さも相まってダラダラと汗を流しながら、近藤の気配がなくなるのを待った。はぁ~…いなくなったのを確認すると大きく安堵の息をもらす。「………ぶはぁっ」「てんめぇ~…一体どうゆうつもりだコラ!?事と次第によっちゃぁ斬るぞ!?っていうか斬っていいか!?」布団から顔を出した紫音の胸倉を掴み、揺さぶる。紫音はガクガクと揺られながら笑った。「まぁまぁ落ち着いて下さいよ。また皆来ちゃいますよ?」「だーかーらっ何の用だ?」「さっき言ったじゃないですか、Bank Account Opening Hong Kongす」ニッコリ、笑うと紫音は掴まれた胸倉の腕を取り、くるんと土方を押し倒す。したたかに背中を打ち、一瞬息を詰まらせる土方。起き上がろうとしたが、何故か力を入れても起き上がれない。「押し倒すのは得意なんです」得意げに言われた事で、ようやく土方の頭が冷静になる。体に感じる重みや柔らかさはまごうことなき女のもの。経験豊富な土方だからこそ、冷静になれたと言えよう。「私がやりましょうか?」「…何をだよ?言っとくが、俺は押し倒される趣味はねぇんだよ。山崎!後は俺が処理する。見てんなら野暮だぜ?」」床下に潜む山崎に不適に笑う土方。山崎は拔(ばつ)が悪そうに床下から現れ、頭を下げた。「心配かけて悪ぃな」「いえ…失礼します」土方は思った。…残念そうに見えんのは気のせいか?答は否。山崎は何とかしてこの面白い状況を見ようと画策するのだった。山崎の後ろ姿をクスクスと笑いながら見送り、紫音は土方に向き直る。「さすがに庇いきれないんでしょう?「ふん、白々しい事言ってんじゃねぇよ」「え?」「お前が会津藩から来てる密偵なんだろ?」………違います。と思ったが、これはいい誤解かもとあえて顔を俯ける。まんまとその反応に誤解した土方は、どうだと言わんはかりの得意げな表情だ。「おかしい事だらけだと思ったぜ。山崎に探らせても何も浮かんじゃこねぇし、友人とか言いつつ顔も出さねぇんだからな。まぁいい。せいぜい働いて、上に近藤さんて男の武士(オトコ)っぷりを報告しろ。あの人程本気で幕府に準ずる覚悟がある奴はいねぇ」この土方にここまで言わせるとは、ずいぶん惚れこまれたものだ。紫音はふっと柔らかい笑みを浮かべる。一番知りたかった事を、土方自身が口にしてくれた。上っていうのはあながち間違ってないし。「だが…俺を侮るなよ。俺は近藤さん程甘かねぇ。せいぜい利用させてもらうぜ?」目をギラつかせ、釘を刺した土方は真っ直ぐに紫音を見据えた。次の瞬間、気を抜いていた紫音の体が反転する。驚き、目を見開くとそこには端正な土方の顔が間近にあった。「せっかく夜這いに来てくれたんだ。いい加減に事をしようじゃねぇか」そういうとのしかかる体。紫音は顔を真っ赤にして土方の胸を押しやる。くつくつと喉を鳴らしながら、楽しそうに土方は笑った。「拒むこたねぇじゃねぇか。お前から来たくせによ」首筋に唇を這わせながら、土方はニヤニヤと腕を留める。紫音はその感触にゾクリと身震いした。「………嫌いです」「…何?」「私はお前と呼ばれるのは嫌い…です!」ドスッ土方の鳩尾に、紫音の膝蹴りが入った。声もなく、悶絶する土方。「私には名前があるのでそれで呼んでくれませんか、歳チャン?」乱れた着物を直しながら、紫音は半身を起こして言った。土方はいまだ痛む腹を押さえながら何とか息を整える。


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